テレビのニュースでたまに見かけますよね。
「老朽化した高架橋からコンクリートの塊が落下し、下を走行中の車のフロントガラスを直撃」。
一般の方からすれば「うわぁ、怖いな」という感想で終わるかもしれませんが、私たち橋梁補修の同業者としては、本当に心臓がキュッと縮み上がる思いで画面を凝視しています。「うちが管理しているエリアじゃないよな……明日は我が身かも……」と。
歴史ある京都の街には、風情ある古い橋がたくさん残っています。
しかし、表面の欄干(手すり)や舗装は綺麗に見えても、橋の裏側に回ると、実はギリギリの状態で持ちこたえている「明日は我が身」予備軍が結構あるんです。
今回は、「京都 橋梁補修」の中でも一番緊急性が高く、私たちが絶対に防がなければならない「剥落(はくらく)防止」についてお話しします。
叩けばわかる、橋の悲鳴と恐怖の「ポコポコ音」
私たちは橋の定期点検や調査をする際、「点検ハンマー」という先端が少し尖った専用の道具を使います。
あれでコンクリートの壁や天井をコツコツ、カンカンと叩いて回るんですが、内部に異常がある悪い場所は、音が全然違うんです。
中身がしっかりと詰まっている健全な場所は「キンキン!」って高く澄んだ音が跳ね返ってきます。でも、内部の鉄筋が錆びて膨張し、コンクリートがひび割れて浮いている場所は「ポコポコ」「ボソッ」って、中に空洞があるような濁った鈍い音がする。
この「ポコポコ音」を聞くと、冬場でも背筋に冷や汗がツツーッと流れます。
「うわ、これ完全に皮一枚で繋がってるだけやん……いつ剥がれ落ちてもおかしくないぞ」って。
コンクリートの塊なんて、たとえ握りこぶしくらいの大きさでも、数メートルの高さから落ちてきたら凶器です。下を通る歩行者や自転車に当たりどころが悪ければ、本当に命に関わります。
そんな危険箇所を見つけたら、悠長に見積もりを作っている場合じゃありません。即座に、今にも落ちそうな部分をハンマーでガンガン叩き落とす(強制剥落させる)か、応急処置でネットを張って落下を防ぎます。この数分のスピード感が、文字通り誰かの命を救うんです。
たまに通りがかりの方から「せっかくのコンクリートをなんで壊してるの?」と聞かれますが、「勝手に落ちて人を傷つけるより、私たちの管理下で安全に落とす方がマシだから」です。これも一種の緊急手術ですね。
見た目は悪いけど、ネットは最強の保険
本格的な補修工事では、悪い部分を完全に除去して新しいモルタルで埋め戻し、最終的に繊維シートを貼ったりして綺麗に直します。しかし、自治体の予算の都合や工期の関係で、すぐにはそこまで大掛かりな工事ができない場合もあります。
そんな時は「剥落防止ネット」の出番です。橋の裏側全体を、丈夫な細かいネットですっぽり覆ってしまう工法です。
正直なところ、見た目はあまり良くないですよ?
歴史ある京都の美しい景観に、無骨な黒や緑のネットがかかるわけですから、「景観を損ねるからやめてくれ」とご意見をいただくこともあります。
でも、「景観の美しさ」と「人の命の安全」、どっち取るの?って言われたら、僕らは迷わず安全を取ります。
誰かが怪我をして、取り返しのつかないことになってからじゃ遅いんです。「美観ももちろん大事ですが、まずは地域の皆様の命を守らせてください」と、頭を下げて説明することもあります。
「うちの管理してる橋、最近コンクリートの欠片がポロポロ落ちてる気がする……」
「ひび割れから水が染み出して、茶色いシミができている……」
そんな危険な予兆があったら、今すぐ電話してください。大至急見に行きます。脅しじゃなく、本当に危ないですから。



